お盆に実家に帰ったら、まず冷蔵庫を開けてください。
親は「大丈夫」としか言いません
久しぶりに実家に帰る。
「どう、元気にしてる?」
「ああ、大丈夫だよ。心配いらない」
たいてい、この会話で終わります。
親は子どもに弱いところを見せません。心配をかけたくないからです。元気そうに笑って、お茶を出してくれる。それを見て「まあ大丈夫そうだな」と思って、二日三日で帰っていく。
でも、本当のことは、言葉ではないところに出ています。
冷蔵庫です。
冷蔵庫は嘘をつきません。
冷蔵庫を開けた瞬間、分かること
私は五十年以上、台所に立ってきました。長く弁当店をやり、いまは高齢者施設の厨房で、毎日ご高齢の方の食事を作っています。
そういう目で冷蔵庫を見ると、分かってしまうことがあります。
一、同じものばかりが入っている
鮭の塩焼きのパック。鯖の塩焼きのパック。また鮭の塩焼き。
似たような焼き魚の惣菜が、いくつも入っている。
これは「買い物に行くのがやっと」のサインです。売り場を回って選ぶ体力がない。目に入ったものを手に取って、レジに向かう。だから毎回、同じものになる。
二、手つかずのまま、賞味期限が切れている
買ってはある。でも、食べていない。
食欲が落ちているのか、作る気力がないのか、食べたことを忘れているのか。理由はいろいろですが、買う力はあるのに食べる力が落ちているというのは、見過ごしてはいけないサインです。
三、量がおかしい
夫婦二人しかいないのに、三個入りの豆腐が三パック。納豆も同じように三つも四つも。
奥のほうを見ると、二か月前の日付だったりします。
これは「買ったことを忘れて、また買っている」状態です。特売のお弁当が三つ四つ、期限切れのまま残っているのも同じです。
四、そして、においです
扉を開けた瞬間、プーンと嫌なにおいがする。
私は、これが一番怖いと思っています。
においがしているのに、本人は気づいていない。あるいは、気づいていても片づける力がない。どちらにしても、日常の管理が手から離れかけているということです。
冷蔵庫は、その家の暮らしがそのまま出る場所です。においがするということは、そこが回らなくなっているということです。
台所で、もう三つ
冷蔵庫を閉じたら、ついでに見てほしいところがあります。
ガスコンロの周り。焦げ跡が増えていないか。鍋の底が真っ黒になっていないか。火を使うのが危なくなってきているかもしれません。
流し。洗い物がためこまれていないか。スポンジがカチカチに固まっていないか。
ゴミ袋。出し忘れが溜まっていないか。ゴミ出しは、意外と体力のいる作業です。
どれも、本人は「大丈夫」と言います。でも、台所は正直です。
「気づいた」あと、どうするか
ここが一番むずかしいところです。
親を問い詰めても、たぶん何も変わりません。「余計なお世話だ」と言われて終わりです。長く自分の家を守ってきた人ほど、そうです。プライドを傷つけられたと感じてしまう。
だから、いきなり結論を突きつけないでください。
まずは、こう聞いてみてください。
「買い物、重くない?」
食べていないことや、においのことではなく、荷物の重さから入る。これなら親も認めやすい。米、牛乳、飲み物。あれは若い人でも重いのですから。
そこから、「じゃあ誰かに運んでもらおうか」という話につなげていけます。
それでも、遠くにいる自分にはできない
「気づいたけど、自分は遠くに住んでいる」
ここで止まってしまう方が、本当に多いのです。
毎週帰れるわけではない。仕事も家庭もある。かといって、施設に入れるような段階でもない。介護保険を使おうにも、要介護認定がなければ使えませんし、認定されても買えるものには制限があります。お酒やお菓子といった嗜好品は対象外ですし、遠くの店に行ってもらうこともできません。
その「あいだ」が、すっぽり空いているのです。
私がやっていること
私は埼玉県上尾市で、買い物代行をしています。
ご依頼くださるのは、たいてい遠方に住んでいるお子さんです。
親御さんの代わりにスーパーへ行き、ご自宅までお届けします。レシートは必ずお渡しします。そして、そのときの親御さんの様子を、ご家族にお伝えしています。
「今日はお元気そうでしたよ」
「少し咳が出ているようでした」
こういうことを知らせてもらえるだけで、遠くにいる方の気持ちはずいぶん軽くなります。
長く料理をしてきましたから、何が食べやすくて、何が負担になるかは、だいたい分かります。ただ物を運ぶだけの仕事とは、少し違うつもりでいます。
最後に、正直なことを
もし冷蔵庫を開けて、これはただごとではないと感じたら——たとえば、においがひどい、明らかに食べていない、同じ話を何度もする——そのときは買い物代行より先に、お住まいの地域包括支援センターに相談してください。
無料です。どの市区町村にもあります。役所に電話すれば、すぐに教えてもらえます。
私にできるのは、買い物と、ちょっとした見守りだけです。それ以上のことは、それ以上の専門家がいます。そこを正直に言えないような業者に、大事な親御さんを任せてほしくありません。
このお盆、実家に帰られたら、どうか一度、冷蔵庫を開けてみてください。
親御さんが言わないことが、そこに書いてあります。
上尾市とその周辺で、買い物代行を承っています。
遠方にお住まいのご家族からのご相談も歓迎です。